東京地方裁判所 平成9年(行ウ)111号 判決 1999年3月30日
原告
足立産業株式会社
右代表者代表取締役
小宮山英一
右訴訟代理人弁護士
早乙女芳司
被告
東京都固定資産評価審査委員会
右代表者委員長
森田重夫
右訴訟代理人弁護士
川上俊宏
右指定代理人
高山猛
同
田中敏夫
同
川久保清
主文
一 被告が、平成九年一月二二日付けでした、別紙物件目録記載(一)ないし(四)の各土地に係る土地課税台帳に登録された平成六年度の価格に関する原告の審査申出につき、同目録記載(一)、(二)、(四)の各土地の価格を同目録記載の変更価格とし、同目録記載(三)の土地について審査申出を棄却した決定のうち、同目録記載(一)の土地につき五〇億三〇九七万六七八〇円を超え、同目録記載(二)の土地につき三億二四二五万五八一〇円を超え、同目録記載(三)の土地につき四億四二七二万四四九〇円を超え、同目録記載(四)の土地につき八億三七八九万三〇四〇円を超えて棄却した部分を取り消す。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを一五分し、その一を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 「適正な時価」の意義
固定資産税は固定資産の所有者に対して、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であり、資産が土地の場合には、その更地価格を基礎として、賦課期日における所有者を納税義務者として課税される。
このような固定資産税の性質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(以下「客観的時価」という。)をいうものと解すべきである。
二 評価基準による評価と客観的時価との関係
1 適正な時価の意義を前記のように解すると、土地の適正な時価の算定は、鑑定評価理論に従って個々の土地について個別的、具体的に鑑定評価することが最も正確な方法ということになるが、限りある人的資源を活用しても、一定の期間内に、反復・継続的に、全国に存在する大量の土地について均衡のとれた評価を実施することは、困難を極めることから、法は、これらの諸制約の下において、その評価方法を自治大臣の定める統一的な評価基準によらしめることとし、もって、大量の土地について反復・継続的に実施される評価を可及的に適正に行い、各市町村全体の評価の均衡を確保するとともに、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消しようとしているのである。
2 右のように、法は、固定資産の評価については、評価基準によることを求めているから、法にいう「適正な時価」とは、評価基準によって評定された時価ということになる。
ところで、評価基準は、各筆の土地を個別評価することなく、標準宅地の客観的時価を個別鑑定に準じた方法で算定し、価格形成要因の主要なものについての補正等を加えて、対象土地の価格を比準評定することとしており、固定資産の価格に影響を及ぼすべきすべての事項を網羅するものでもないから、標準宅地の価格評定及び評価基準による比準の手続が適正でも個別的な評価と同様の正確性を有しないことがあることは、制度上やむを得ないものというべきであり、評価基準による評価と客観的時価とが一致しない場合が生ずることも当然に予定されているというべきである。しかし、「適正な時価」とは本来客観的に観念されるべき事項であって、法が自治大臣の策定する評価基準に委任したものは「適正な時価」を評価するための基準、方法及び手続であるから、評価基準による評価が客観的時価を上回る場合には、その限度において、登録価格は法に反するものということになる。
三 「適正な時価」の算定基準日
1 そして、法は、登録価格を基準年度に係る賦課期日における価格(客観的時価)としているから(法三四九条一項、三四一条五項)、右登録価格である客観的時価を算定すべき基準日は、賦課期日である当該年度の属する年の一月一日、本件についていえば、平成六年一月一日となる。そして、評価基準の定めも、この理解を前提とするものと解すべく、法附則一七条の二及び一八条も、他の時点をもって登録価格の算定基準日とする根拠とすることはできない。
もっとも、法は、市町村長の価格決定を賦課期日の約二か月後に当たる二月末日までに行うべきものとしている(法四一〇条)ところ、大量に存在する課税対象につき「適正な時価」を算定する諸手続を考慮すると、約二か月間のうちに評価事務のすべてを行うことは困難であることからすれば、標準宅地等の価格評定事務については、賦課期日から相当な期間をさかのぼった時点を価格調査の基準日として行うことを法が禁止しているものとは解されない。
しかし、このことは、右価格調査基準日又はその後の特定の日を定めて、この時点以降の価格変動を考慮することなく標準宅地の評価額を定め、これを対象土地へ比準算定した価格をもって、賦課期日における価格とみなすことを許容するものではない。けだし、価格調査基準日又はその後の特定の日以降の価格の下落を考慮せず、右特定の日を価格の基準とすることは、法に規定しない日をもって評価基準日とすることになり、課税標準算定の根幹となる価格評価の時点をあいまいにするものであり、他方、価格調査基準日における価格を基礎として算定した価格で賦課期日における適正な時価を上回ると見込まれるときは、予め想定される価格下落率を折り込んで各土地の価格評定事務を遂行することは可能であり、かかる事務処理を法あるいは評価基準が禁止しているものと解することもできないからである。
2 なお、平成六年度の評価替えに当たり、自治省税務局資産評価室長が各都道府県総務部長及び東京都主税局長宛に発した「平成六年度評価替え(土地)に伴う取扱いについて」と題する通知(平成四年一一月二六日自治評第二八号)は、標準宅地の評価額を価格調査基準日のそれに固定することなく、時点修正をすべき旨を教示するものと解されるが、さらに、賦課期日までの時点修正の必要性を否定する趣旨と解することはできない。
3 以上によれば、少なくとも評価額が客観的時価を超えるという事態が生じないよう、あらかじめ減額した数値をもって標準宅地の「適正な時価」として扱うことは合理的な方法というべきであり、また、評価手続上、賦課期日の時価が予測値にならざるを得ないことを考慮して、「適正な時価」をあらかじめ控え目に評定することも許されるものというべきであり、かかる趣旨において、宅地の評価に当たっては当分の間地価公示価格等を活用して得られた価格の七割程度とすべき旨の平成四年一月二二日付け自治事務次官通知(自治固第三号)に従った評価も適法というべきである。
なお、右通知の趣旨が公的土地評価の相互の均衡と適正化又は固定資産税の前記性格を考慮したものであって、賦課期日までの時点修正を目的とするものではないとしても、評価基準の適用においては、七割評価という修正を加えられた標準宅地の価格が賦課期日における「適正な時価」とされているのであるから、標準宅地の価格の適否は右修正を加えられた価格が賦課期日における客観的時価を超えないものであるかどうかによって判断すべきことになる。
四 訴えの利益について
法は、固定資産の価格という客観的事実について審査申出を認め(法四三二条)、右申出に対する決定については、固定資産税の課税処分に対する不服とは区別して、審査決定に対する取消訴訟を提起すべき旨を規定している。これは、登録価格が、法によって当該固定資産の適正な時価を示すものとされているために、固定資産税又は都市計画税のみならず不動産取得税(法七三条の二一第一項)及び登録免許税(登録免許税法附則七条)の課税標準の算定基礎としても機能する等当該固定資産の所有者又は取得者に対し様々な経済的な影響を及ぼすことが予想されるため、特に固定資産税の税額に対する不服とは別個に、登録価格につき独立に不服申立ての制度を設けてその額の適正な担保せしめるとともに、その早期の確定を図ったものと解される。
このような法の趣旨に照らせば、登録価格に変動が生じうる訴えである限り、訴えの利益を認めることができるというべきであって、単に固定資産税及び都市計画税の税額に変動がないということのみをもって、本件の訴えの利益がないとする被告の主張を採用することはできない。
五 本件各決定の適法性について
1 評価基準等の一般的合理性
評価基準第1章第3節によれば、市街地的形態を形成する地域における宅地については、市街地宅地評価法によって評価する旨が定められている。この評価法は、いわゆる路線価方式による評価法であるが、路線価方式は、大量の宅地を短期間に相互の均衡を考慮しながら評価する方法として使用することができるものと一般に解されており、評価基準において路線価方式を採用したことには合理性があるということができる。
また、評価基準は、市街地宅地評価法における各街路の路線価を売買実例価格を基礎として、街路の状況、公共施設の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等及び各街路の路線価の均衡等を総合的に考慮して決める旨定めているが、このような定めは鑑定評価理論と矛盾するものではなく、本件においては主要街路からその他の街路への比準に当たって適用された基準もその考慮要素、補正割合において一般的に合理的なものと推認することができ、また、弁論の全趣旨によれば、取扱要領による奥行価格補正の方式も客観的時価への接近の方法として合理性を有するものといえる。
したがって、評価基準等における市街地宅地評価法は「適正な時価」へ接近するための合理的な方法であると推認することができる。
2 評価基準等への適合性
(一) 標準宅地の選定
(1) 本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地について
〔証拠略〕によれば、本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地の面している正面路線は、市街地的形態を形成する地域のうち高度商業地域あるいは繁華街と比較して日常生活圏の中心地であって、概して街路沿いのみに多種類の資本投下量の少ない店舗が連なっている普通商業地区に存すること及び標準宅地aと同一の状況類似地区内に存すること並びに本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地の面している側方路線及び二方路線は主として一般住宅が集合している普通住宅地区に存すること及び標準宅地bと同一の状況類似地区内に存することがそれぞれ認められる。
(2) 本件土地(三)について
〔証拠略〕によれば、本件土地(三)の面している正面路線は主として一般住宅が集合している普通住宅地区に存すること及び標準宅地bと同一の状況類似地区内に存することがそれぞれ認められる。
(3) 本件土地(五)、(六)について
〔証拠略〕によれば、本件土地(五)、(六)の面している正面路線は主として一般住宅が集合している普通住宅地区に存すること及び標準宅地cと同一の状況類似地区内に存することがそれぞれ認められる。
(二) 標準宅地aないしcの価格の算定
弁論の全趣旨及び被告王張の本件各土地の登録価格の算定過程に照らせば、標準宅地の選定を含め、標準宅地aないしcの価格の算定方式自体は、平成五年一月一日より後の時点修正をしないことの適否を除き、評価基準等に従っているものと推認することができる。
3 標準宅地の価額の適正さ
(一) 標準宅地aの平成四年七月一日における評価額及び平成五年一月一日までの時点修正をした価格は〔証拠略〕、弁論の全趣旨及び時点修正率を含む算定方式に照らして、右各時点における客観的時価であったことが推認され、右推認を覆すに足る事情は本件全証拠によって認めることはできない。
(二) そこで、平成五年一月一日から平成六年一月一日の間における本件各土地及び標準宅地aないしcの近隣地域の地価変動を検討する。
(1) 標準宅地aについて
〔証拠略〕によれば、標準宅地aの鑑定評価に当たり規準価格算定の基礎とされた公示地渋谷五―六は、本件土地(一)、(二)、(四)の道路反対側に位置し、標準宅地aとも同一の需給圏内にあることが推認されるところ、その公示価格は右期間に約三七・八パーセント下落していることが認められる。なお比較対象地を本件各土地を中心とする半径一キロメートルの範囲に採用した場合、本件各土地又は標準宅地との類似性が低いと推認される宅地が含まれることになり、本件各土地又は標準宅地との類似性が希釈されることはあっても、より規範的な数値が得られるものと認めることはできないから、標準宅地aについては、右期間内に少なくとも三七・八パーセントの地価下落があったものと推認することができる。
(2) 標準宅地bについて
〔証拠略〕によれば、標準宅地bの鑑定評価に当たり基準価格算定の基礎とされた公示地渋谷―二(東京都渋谷区千駄ケ谷〔番地略〕)の公示価格は右期間に約三六・五パーセント下落していること、右公示地は標準宅地bと地理的に離れているが、標準宅地bに比準するに当たっては、地域格差において九五分の一〇〇が乗じられていることが認められる。なお比較対象地を本件各土地を中心とする半径一キロメートルの範囲に採用した場合、本件各土地又は標準宅地との類似性が低いことが推認される宅地が含まれることになり、本件各土地又は標準宅地との類似性が希釈されることはあっても、より規範的な数値が得られるものと認めることはできないから、標準宅地bについては、右期間内に少なくとも三六・五パーセントの地価下落があったものと推認することができる。
(3) 標準宅地cについて
〔証拠略〕によれば、標準宅地cの鑑定評価に当たり基準価格算定の基礎とされた公示地大田五―四の公示価格は右期間に約二五パーセント下落していることが認められるから、標準宅地cについては、右期間内に少なくとも二五パーセントの地価下落があったものと推認することができる。
4 個別的な当てはめの違法の有無について
(一) 本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地について
(1) 交通・接近条件に係る格差率に係る原告の主張について
〔証拠略〕によれば、本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地に係る正面路線の中心付近から最寄り駅への距離は二八〇メートル、主要街路aの中心付近から最寄り駅への距離は一六〇メートルと認めることができるから、右と異なる距離を主張する原告の主張は理由がない。
なお、右距離は、標準宅地の主要な街路の路線価と評価の対象となる土地に沿接する正面路線とを比較するためのものであるから、標準宅地と評価の対象となる土地又は各土地が街路に接する部分そのものを起点として計測すべきものではなく、標準宅地の主要な街路及び評価の対象となる土地に沿接する正面路線に係る各路線(一般的には、街路状況の類似性が保持し得る交差点から交差点までの街路とすることが妥当である。)の中点を起点とすべきである。
また、原告は、商業中心地を表参道と明治通り交差点の北西隅とした上で、被告が認定した商業中心地までの距離を問題とするが、〔証拠略〕によれば、表参道と明治通りの交差点北西隅の付近は、道路沿いに小規模な商業店舗が連なっているにすぎず、反対に被告が主張する商業中心地の並びには、小規模な商業店舗の中に比較的規模の大きい商業ビルが散見され、商業中心地自体も規模の大きい商業ビル(ラフォーレ原宿)の敷地であることが認められるから、この点に関する原告の主張は理由がないというべきである。
(2) 奥行価格補正率について
この点、原告は不整型地の奥行補正は、地積を間口距離で除して得た計算上の奥行距離を基礎とすべきと主張する。しかしながら、次の(3)に記載するとおり、本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地は、不整形地に該当しないというべきであるから、この点に関する原告の主張は採用することができない。
(3) その他
原告は、本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地の形状に照らして不整型地補正をすべきであると主張する。
この点、不整形地補正がされるのは、画地の形状が不整形であって宅地としての利用価値が減少する場合には、当該土地の価格もそれに伴って減少すると推認できることによるものであるから、不整形地とは、当該土地の形状が不整形であるため宅地としての利用価値が減少する形状の画地をいうと解すべきである。これを本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地についてみると、右画地は、三方において接道しており、建物の建築等が通常の状態において行い得るものというべきであり、〔証拠略〕によれば、現に利用していると認めることができる。
また、原告は、本件土地(一)、(二)、(四)を合わせた画地について、評価基準等に定めのない容積率に係る補正(補正率〇・九七とする補正)を行うべきであると主張するが、評価基準等は、各対象土地を個別評価することなく、諸制約の下で大量の土地について可及的に適正な評価をするための技術的方法であり、土地の価格要素のすべてを網羅するものではなく、個別評価と同様の正確性を有するものではなく、大量処理に適した典型的な価格形成要素についての大数的基準による評価を積み重ねて客観的時価に接近する方法であり、個別的算定要素が必ずしも実情に沿うものでなかったとしても、評価基準等に準拠した評価額が客観的な時価を超えないときは、右評価をもって違法ということはできないことは既述のとおりであり、原告の主張によっても、容積率に係る補正をしなかったが故に、右各土地の登録価格が賦課期日における客観的取引価格を超えるとの事情を認めることはできないから、この点に関する原告の主張は失当である。
(二) 本件土地(五)、(六)について
(1) 交通・接近条件に係る格差率に関する原告の主張について
〔証拠略〕によれば、本件土地(五)に係る正面路線の中心付近から最寄り駅への距離は五〇メートル、主要街路cの中心付近から最寄り駅への距離は一二〇メートルと認めることができるから、右と異なる距離を主張する原告の主張は理由がない。
(2) その他
また、原告は、本件土地(五)の形状に照らして不整型地補正をすべきであると主張するが、〔証拠略〕によれば、本件土地(五)の形状は、建物の建築等が通常の状態において行い得るものであり、現に利用していると認めることができるから、本件土地(五)を不整形地でないとした点において被告の本件決定(2)に違法はないというべきである。
また、本件土地(五)について、評価基準等に定めのない容積率に係る補正をしなかった点において、本件決定(2)に違法がないことは、前記(二)(3)記載のとおりである。
5 本件各土地の価格について
そうすると、標準宅地a及び標準宅地bについては、右期間内に三〇パーセント以上の価格の下落があったことになるから、平成五年一月一日の価格の七割を平成六年一月一日の価格として、価格算定をした点に当てはめの違法があるというべきであり、標準宅地cについては、右期間内の価格の下落率は三〇パーセントに満たないから、平成五年一月一日の価格の七割を平成六年一月一日の価格として価格算定をした点に違法はないというべきである。
そして、平成六年一月一日における標準宅地aの主要な街路の路線価は、平成四年七月一日時点の不動産鑑定評価価格二〇二〇万円に平成五年一月一日までの時点修正として八五・二パーセント及びその後の平成六年一月一日までの時点修正として六二・二パーセントを乗じた一〇七〇万点(上位四桁以下切捨て)となり、平成六年一月一日における標準宅地bの主要な街路の路線価は、平成四年七月一日時点の不動産鑑定評価価格三一〇万円に平成五年一月一日までの時点修正として七九・一パーセント及びその後の平成六年一月一日までの時点修正として六三・五パーセントを乗じた一五五万点(上位四桁以下切捨て)となり、これに基づく本件土地(一)の価格は五〇億三〇九七万六七八〇円、本件土地(二)の価格は四三億二四二五万五八一〇円と、本件土地(三)の価格は四億四二七二万四四九〇円と、本件土地(四)の価格は八億三七八九万三〇四〇円と算定される(別表5参照)。
なお、原告は、本件各土地の平成六年一月一日における時価を立証するものとして、鑑定意見書(〔証拠略〕)を提出するが、その内容については、原告の主張について既に説示したことが妥当し、右鑑定意見書をもって右算定が時価を超えるものであると認めることはできない。
六 結論
以上によれば、原告の本訴請求は、平成五年一月一日より後の価格下落を考慮しなかったため本件土地(一)ないし(四)の登録価格が主文一掲記の価格を超えることの違法を主張する趣旨において理由があるので、その限度で本件決定(1)を取り消し、その余の請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六四条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 團藤丈士 水谷里枝子)